2024年5月18日(土)

BBC News

2024年5月4日

カナダ西部で昨年にシーク教指導者が殺害された事件で、カナダ警察は3日、インド国籍の男3人を殺人容疑で逮捕した。この事件は、カナダとインドがお互いの外交官を国外追放するなど外交問題に発展している。

シーク教指導者ハーディープ・シン・ニジャール氏(45)は昨年6月18日夕、ブリティッシュコロンビア州のシーク教寺院「グル・ナナク・シーク・グルドワラ」の混雑した駐車場で、自分の車の中にいたところを覆面の2人組によって射殺された。同寺院はヴァンクーヴァーから東約30キロのサリー市にある。

カナダのジャスティン・トルドー首相は当時、殺害にインド政府が関与した疑いがあると主張し、両国の外交問題はエスカレートした。

インド政府はこの疑惑を強く否定している。

王立カナダ騎馬警察(RCMP)のマンディープ・ムーカー警視は3日、カラン・ブラー容疑者(22)、カマル・プリート・シン容疑者(22)、カラン・プリート・シン容疑者(28)の3人を逮捕したと明らかにした。

ムーカー警視によると、3人はいずれもアルバータ州エドモントン在住で、同市内で逮捕された。裁判所記録によると、3人は第一級殺人罪と殺人の共謀罪で訴追された。

調べによると、3人のカナダ滞在歴は3~5年。「インド政府とのつながり」を含めて捜査を継続しているという。

「これらの問題について、個別の、異なる捜査が進行中だ。当然、今日逮捕された人物の関与に限定されているわけではない」と、デイヴィッド・テボール副総監は述べた。

捜査当局はこの事件についてインド当局と連携している。しかし、その協力関係は数年前から「むしろ困難で、挑戦的なもの」になっていると、捜査当局は言う。

警察はニジャール氏殺害に関与した人物がほかにもいる可能性があるとし、今後さらなる逮捕や訴追が起こり得るとしている。

「殺害リスト」に載っていたか

シーク教徒はインドでは人口の約2%を占める、宗教的少数派。一部のシーク教徒はかねて独立国家の樹立を求めている。

インド・パンジャブ地方にシーク教徒の独立国を作ろうとする活動家たちが目指す、新しい国の名称が「カリスタン」。その建国運動を「カリスタン運動」と呼ぶ。

1970年代と80年代にインドから分離独立しようとする動きが起きたものの、摘発され、多数の犠牲者を出した。それ以来、「カリスタン運動」はカナダやイギリスなど、シーク教徒が多く住むカナダ、オーストラリア、イギリスなど外国を中心に続いてきた。

カナダ・ブリティッシュコロンビア州最西部の著名なシーク教指導者だったニジャール氏は、このカリスタン運動を公に支援していた。支持者らはニジャール氏について、その活動ゆえに過去に脅迫を受けていたと話している。

インドはかつて、ニジャール氏を分離主義の武装グループを率いるテロリストと呼んだことがある。これについて、ニジャール氏の支持者らは「無根拠の」批判だと反論した。

ニジャール氏に近しい人たちは、同氏が生前にカナダの諜報機関から、「殺害リスト」に名前が載っており、命の危険があると警告されていたと話している。

ニジャール氏の15年来の友人で、ブリティッシュコロンビア州シーク教グルドワラ評議会のメンバー、モニンダー・シン氏は、シーク教徒コミュニティは捜査で進展があったことに感謝していると語った。

一方で、今も「公共の安全への懸念」や「多くの緊張がある。いらだちもあれば、希望もある」とした。

事件から3カ月後の昨年9月、トルドー首相は議会で、ニジャール氏の死とインド政府を「結びつける可能性のある、信用できる訴え」を、カナダ情報当局が調べていると報告した。

これに対し、インド外務省は、カナダがインドの安全を脅かす「カリスタンのテロリストと過激主義者」をかくまっていると非難した。

両国間の対立を受け、インド政府は同国に駐在するカナダの外交官の人数を減らすよう、カナダに要請した。

インド政府の関与を主張するトルドー首相に対して、インド政府は証拠提示を強く求めている。

(英語記事 Three arrested and charged over Sikh activist's killing in Canada

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c51nj333g14o


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