2024年5月18日(土)

人口減少社会とスポーツと子どもと

2024年5月5日

 群馬県南東部に位置する桐生市で、新たなプロジェクトが本格化している。人口約13万人の地方都市が、野球をきっかけとしたスポーツ×地域活性を目指す「球都桐生プロジェクト」だ。

 市内にある5つの高校で甲子園出場経験があるなど、古くから野球が盛んだった同市でプロジェクトを仕掛けたのは、同市出身で、プロ野球・千葉ロッテマリーンズや日本代表「侍ジャパン」などでビジネスを手がけた荒木重雄氏だ。

 荒木氏は2023年2月、一般社団法人の「桐生南スポーツアカデミー」を設立し、中学の硬式野球団・ポニーリーグのチーム「桐生南ポニーリーグ」も発足した。チームの活動以外に、本腰を入れるのがトレーニング施設「球都桐生野球ラボ」での事業だ。

 閉校した県立桐生南高校の跡地に24年3月に誕生し、子どもから大人までが、科学的なデータに基づいてトレーニングできる施設となっている。桐生南スポーツアカデミーが跡地の利用者として設けた。

トレーニング施設「球都桐生野球ラボ」(一般社団法人桐生南スポーツアカデミー)

 ピッチングレーン1つとバッティングレーン2つが設けられたこのラボの特徴は、アマチュア層(子どもたちも含めて)をターゲットにしていることで、小学生から高校年代までの市内の子たちが、どう成長していくかをデータで集積していくことができる。具体的には、室内練習場で「フィジカル測定(身長、体重、柔軟性、握力など)」に加え、「野球パフォーマンス測定」を定期的に受けることができる。市内在住の子どもたちの利用には、市から助成金が出て、自己負担はスタンダートの測定だとかからない仕組みになっている。

 施設内でのデータの計測は本格的だ。打撃であれば、バットのスイング速度や軌道、ボールに対する角度など13項目をチェックできる。打球速度と角度がラボ内の「ラプソード」と呼ばれる装置によって、計測した数値をデータ化する。

 現在の米メジャーリーグでは、ゴロよりもアッパー気味のスイングでフライになる打球を打ったほうが、安打になる確率が上がるという新たな打撃理論の考えが浸透し、「フライボール革命」と名付けられた。

 具体的には、打球速度が時速158キロ以上、打球角度が26度~30度で上がった打球が最もヒットやホームランになりやすいとされ、「バレルゾーン」と呼ばれる。

 野球ラボの施設では、打球が数値化されることで、従来のように「ボール真ん中のやや下にバットを振り下ろして、バックスピンをかける」というような感覚を具現化。どうすれば、打球が上がるかもスイングの軌道から解析されてくる。

 蓄積した動画は「OTS(One Tap Sports)」というアプリに落とし込み、測定を受けた選手たちはスマートフォンでいつでもチェックすることができる。


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