2024年5月19日(日)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年4月22日

店を介さない
性の取引の横行

 銀座の近場のホテルは長年、夕方に満室状態が続いていた。同伴で女性と部屋に入り、交わり、食事を済ましてから揃って店に顔を出す。が、客の懐具合によっては、来店をカットする場合がある。

 元黒服の男性が説明する。

 「店にお金を落としてこそお客です。女の子にいくら小遣いを渡そうと店には関係ない。つまりママには管理売春的な才覚が必要です。たとえば、お客がヘルプの子に目をつけて、ママにその旨を言う。するとママはヘルプの子に伝える。『今日、遅くなって悪いけど、あのお客様とお食事つき合ってくれない?』

 お客は女の子と食事後ホテルに行き、別れ際、女性に車代ぐらい渡すかも知れない。だけどセックス代を渡さない客がいる。次の日、ママが『昨日はお疲れ様』って女性にナンボか渡す。そして次の請求のとき、そのお客のツケに飲み代の他、女の子代も一緒にして請求する。

 つまり飲み代とセックス代がゴッチャになる中で、店の利益が生まれる。またゴッチャにしないと、管理売春でパクられかねない。お客の大半は女性目当てです。年寄りのおばさんと政治や経済の話をしに銀座に来るわけじゃない」

 銀座では日本の景気ばかりか、勤める女性も怪しくなってきた。かつてのように「私は銀座で働いている」といった張りも誇りもなく、単にアルバイト感覚でヘルプに応募する。着ていく服も髪の手入れも簡単に済ましてしまうが、客にとってはそれで十分。客の大半が、女性は若ければ若いほど嬉しい。ヘタすれば女子高生にまで手を出しかねないほど客の〝幼稚化〟が進んでいる。

 女性の側も男性の好みは承知している。女性は若ければ若いほどエライと心得る。時給や日当は高いほどいい。若いうちにたくさん稼ぎたいという思いがあり、「いつか銀座のクラブのオーナーママに」などという夢や希望は皆無である。出会い系アプリで探すより銀座の店はカネ持ちに出会えそう、パパ活アプリより銀座での出会いの方が信頼できそう、ギャラ飲みしてるよりお金になりそうといった考えだから、男性からのカネは自分以外の者に極力落としたくない。だから同伴出勤の義務日などは無視、単に男性とつき合ってカネをもらい、そのまま店に出ないことにも平然としている。

 先の元黒服が分析口調で言う。 

「女の子の性意識が変化しているのでしょうね。性の道具視というか、自分の都合でどうにでも使いこなせるもの。売り出せばきちんと買い手がつくし、売るときに自分を保護してくれる男など要らない。業者に自分の稼ぎから中抜きなどしてもらいたくない。こういう女の子はそもそもクラブのシステムなど不要で、ひたすら売買春の自前化を図るんです」

 たとえば新宿大久保公園の周辺に屯する立ちんぼ。鼻筋を通し、おとがいの骨を削って小顔にしたい、あるいはホストクラブのホストに入れ揚げて多額のツケを背負った、などの理由で整形代やホストへの「推し」代を稼ぐため、彼女たちは自己管理する性を手段に稼ごうとする。裏にホストはいても、売春はヒモのためではない。彼女たちには置屋やソープランド、デリヘルなど半強制的に向き合う「抱え主」はいないし、客が待つホテルへ送迎する運転手も用心棒らしき者もいない。それでいながら、やっていることは一本ドッコの娼婦である。

性の自己管理に伴うリスクは計り知れない。それでも女性たちは〝コスパ〟がいいと考えてしまうのだろうか(BY JASON YEOMANS/GETTYIMAGES)

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